One Early Sunday Morning
2005年9月19日日曜日の朝から電話が鳴った。
んもぉーまだ眠いのに。
時計を見るとまだ8時。
早すぎるじゃん。
こんな早い時間に誰よ?
鳴り止まない電話に、仕方なくいやいや受話器をとる。
らば 「もしもし?」
相手 「もしもし、M美です。」
らば 「あら、どうかしたの?」
相手 「らばさん、よかったらすぐ来てもらえません? 通訳をお願いしたいんです。」
らば 「えっ? 今?」
相手 「ええ、今すぐうちの自宅に来てください」
何が何だかわからぬうちに、とにかく慌てて彼女の家に急いだ。
M美は国際結婚をしてアメリカ人の旦那様がいる。
彼女も留学経験があり、言葉の壁はほとんどない。
だから彼女には通訳はいらないのだ。
だけどただならぬ雰囲気を察知した私は、すぐに支度をして彼女の自宅へと向かった。
彼女の旦那様のJはとても優しい人で、むしろ私はM美よりJのほうが仲良かったくらいだ。
そしてJとM美の家に着くと、顔を傷だらけにしたJが出てきた。
私は思わず、
「What happened to your face?」(その顔どうしたの?)
彼いわく、
「I was attacked by M美 last night and this morning」(昨晩と今朝、M美に襲われたんだ)
だんだん様子がのみこめてきた私。
どうやら、激しい夫婦喧嘩をした様子。
わがままいっぱいに育ったM美は夫への不満をぶちあけて、離婚だと騒いでいるらしい。
彼女の父親も心配して、かけつけてくるということで、興奮してらちがあかない彼女の代わりに、彼女の父親への説明をするためにJの言葉を通訳して欲しいとそういうことらしい。
それで私が呼ばれたわけだ。
こんな朝早くから起こされて、夫婦喧嘩の通訳だと?
むっ。勝手にやってくれよと思っているところへ、父親が登場。
M美の父 「いったいどういうことか、説明してみなさい」
M美 「もうね、私は彼に我慢がならないのっ、今日と言う今日はもう許せない。」
M美の父 「もっと落ち着いて話しなさい。何が気に入らないというんだ」
M美 「この人がだらしなさすぎるのよっ、トイレは流し忘れるし、電気はつけっぱなしだし、扉はどこも閉めてくれないし、私はもう我慢できないわ。」
J 「I only forgot to flush the toilet once」
らば 「トイレは一回流し忘れただけだと言っております」
M美 「No that’s not true, you’ve forgotten at least twice」
らば 「そんなことはないわ、最低2回は忘れているわ、と言っております。」
このあたりで私もいい加減にばかばかしくなってきた。
こんなことするために、私の貴重な日曜の睡眠を邪魔されたのか。
しかし、そのくだらない喧嘩は父親と通訳者が参入していてもエスカレートしていく。
M美の父 「2人ともいい加減にして、どういうことが話してみなさい。」
J 「I will explain the situation」
らば 「Jが状況を説明するそうです。」
そしてここから彼の長い説明が始まった。
説明は実にくだらない、ごく普通の夫婦喧嘩なのであるが、彼の説明の間に、M美がとにかく黙っていられない。
彼が何かをいうと、すぐそれを遮って「ちがうわ」などと大声で言い出す。
Jはいたって冷静だが、むしろM美におびえているようでもある。
そして彼は言う。
J 「I would like to discuss our problems in a sensible and civilised way. She’s way too mad and violent to talk to. 」
らば 「もっと落ち着いて、物分りのよい話し合いがしたいそうです。M美さんが、ちょっと暴力的だと言ってます」
彼はすごく暴力的といったが、そんなことはM美の父には言えない。
しかし、私のそんな苦労と編集をものの見事に無視して、彼女は激しく罵っている。
M美 「you’re absolutely disgussting!! I just can’t stand it」(汚らしくてやってられないわよっ、がまんできないわっ!)
らば (これも訳すのか?)
でも父は私の顔をじっと見ている。
そして仕方なく私は
らば 「えっと、、、あの、Jさんの不潔なところが、許せないそうです。」
M美の父 「(M美に向かって)落ち着きなさい、そんな引っ掻いたりするもんじゃない」
M美の父 「(Jに向かって)君ももっと男らしくしなさい。堂々と構えるんだ」
M美 「I can’t live with you anymore you stupid」
らば 「もう一緒に住めないと言ってます。」
「ばかっ」とかそういうセリフは適度に飛ばす私。
ここまで行くまでの罵り言葉は、どこまで細かく訳すべきか、飛ばすべきかそれだけを考えている私。
「You, little shit!!」のようなけなし言葉を、「おたんこなす」って通訳しようかな、「くそったれ」がいいかな、それとも省略しようかなとか、考えている間に次の罵りが始まっている。
ああ、こんなことに頭使いたくないが、この人たちはもう恥も外聞もないらしい。
全くらちがあかないので、とにかくM美は父親が実家に連れて帰って説き伏せるという形になった。
M美の父が私に朝早くから悪かったねと、なぜか朝から餃子の包みをくれた。
私は仕事ノートというのがあるのだが、そこにはその当時のことがこう書かれている。
○○年□月△日 早朝 夫婦喧嘩の通訳 (3時間)
報酬:餃子の詰め合わせ二箱とデパートの商品券
ちなみにその数週間後、私の気の遣った編集通訳は全く役に立っておらず、彼らは離婚したという連絡を受けた。
ああ、気を遣わずに思いっきり、「おたんこなすっ」とか「ばかやろうっ」って言えばよかった。
ばかやろうっ!
んもぉーまだ眠いのに。
時計を見るとまだ8時。
早すぎるじゃん。
こんな早い時間に誰よ?
鳴り止まない電話に、仕方なくいやいや受話器をとる。
らば 「もしもし?」
相手 「もしもし、M美です。」
らば 「あら、どうかしたの?」
相手 「らばさん、よかったらすぐ来てもらえません? 通訳をお願いしたいんです。」
らば 「えっ? 今?」
相手 「ええ、今すぐうちの自宅に来てください」
何が何だかわからぬうちに、とにかく慌てて彼女の家に急いだ。
M美は国際結婚をしてアメリカ人の旦那様がいる。
彼女も留学経験があり、言葉の壁はほとんどない。
だから彼女には通訳はいらないのだ。
だけどただならぬ雰囲気を察知した私は、すぐに支度をして彼女の自宅へと向かった。
彼女の旦那様のJはとても優しい人で、むしろ私はM美よりJのほうが仲良かったくらいだ。
そしてJとM美の家に着くと、顔を傷だらけにしたJが出てきた。
私は思わず、
「What happened to your face?」(その顔どうしたの?)
彼いわく、
「I was attacked by M美 last night and this morning」(昨晩と今朝、M美に襲われたんだ)
だんだん様子がのみこめてきた私。
どうやら、激しい夫婦喧嘩をした様子。
わがままいっぱいに育ったM美は夫への不満をぶちあけて、離婚だと騒いでいるらしい。
彼女の父親も心配して、かけつけてくるということで、興奮してらちがあかない彼女の代わりに、彼女の父親への説明をするためにJの言葉を通訳して欲しいとそういうことらしい。
それで私が呼ばれたわけだ。
こんな朝早くから起こされて、夫婦喧嘩の通訳だと?
むっ。勝手にやってくれよと思っているところへ、父親が登場。
M美の父 「いったいどういうことか、説明してみなさい」
M美 「もうね、私は彼に我慢がならないのっ、今日と言う今日はもう許せない。」
M美の父 「もっと落ち着いて話しなさい。何が気に入らないというんだ」
M美 「この人がだらしなさすぎるのよっ、トイレは流し忘れるし、電気はつけっぱなしだし、扉はどこも閉めてくれないし、私はもう我慢できないわ。」
J 「I only forgot to flush the toilet once」
らば 「トイレは一回流し忘れただけだと言っております」
M美 「No that’s not true, you’ve forgotten at least twice」
らば 「そんなことはないわ、最低2回は忘れているわ、と言っております。」
このあたりで私もいい加減にばかばかしくなってきた。
こんなことするために、私の貴重な日曜の睡眠を邪魔されたのか。
しかし、そのくだらない喧嘩は父親と通訳者が参入していてもエスカレートしていく。
M美の父 「2人ともいい加減にして、どういうことが話してみなさい。」
J 「I will explain the situation」
らば 「Jが状況を説明するそうです。」
そしてここから彼の長い説明が始まった。
説明は実にくだらない、ごく普通の夫婦喧嘩なのであるが、彼の説明の間に、M美がとにかく黙っていられない。
彼が何かをいうと、すぐそれを遮って「ちがうわ」などと大声で言い出す。
Jはいたって冷静だが、むしろM美におびえているようでもある。
そして彼は言う。
J 「I would like to discuss our problems in a sensible and civilised way. She’s way too mad and violent to talk to. 」
らば 「もっと落ち着いて、物分りのよい話し合いがしたいそうです。M美さんが、ちょっと暴力的だと言ってます」
彼はすごく暴力的といったが、そんなことはM美の父には言えない。
しかし、私のそんな苦労と編集をものの見事に無視して、彼女は激しく罵っている。
M美 「you’re absolutely disgussting!! I just can’t stand it」(汚らしくてやってられないわよっ、がまんできないわっ!)
らば (これも訳すのか?)
でも父は私の顔をじっと見ている。
そして仕方なく私は
らば 「えっと、、、あの、Jさんの不潔なところが、許せないそうです。」
M美の父 「(M美に向かって)落ち着きなさい、そんな引っ掻いたりするもんじゃない」
M美の父 「(Jに向かって)君ももっと男らしくしなさい。堂々と構えるんだ」
M美 「I can’t live with you anymore you stupid」
らば 「もう一緒に住めないと言ってます。」
「ばかっ」とかそういうセリフは適度に飛ばす私。
ここまで行くまでの罵り言葉は、どこまで細かく訳すべきか、飛ばすべきかそれだけを考えている私。
「You, little shit!!」のようなけなし言葉を、「おたんこなす」って通訳しようかな、「くそったれ」がいいかな、それとも省略しようかなとか、考えている間に次の罵りが始まっている。
ああ、こんなことに頭使いたくないが、この人たちはもう恥も外聞もないらしい。
全くらちがあかないので、とにかくM美は父親が実家に連れて帰って説き伏せるという形になった。
M美の父が私に朝早くから悪かったねと、なぜか朝から餃子の包みをくれた。
私は仕事ノートというのがあるのだが、そこにはその当時のことがこう書かれている。
○○年□月△日 早朝 夫婦喧嘩の通訳 (3時間)
報酬:餃子の詰め合わせ二箱とデパートの商品券
ちなみにその数週間後、私の気の遣った編集通訳は全く役に立っておらず、彼らは離婚したという連絡を受けた。
ああ、気を遣わずに思いっきり、「おたんこなすっ」とか「ばかやろうっ」って言えばよかった。
ばかやろうっ!
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